「少人数でもブロックチェーン開発ができるように」CryptoZombiesの生みの親Loom Network独占取材レポート

こんにちは。GameWith人事部の牧野です。

みなさんはLoom Networkを知っていますか?Loom NetworkはEthereumのプロジェクトの一つで、ゾンビを育てながらEthereumの開発言語であるSolidityを学べる「CryptoZombies」やブロックチェーン上で動く開発者向けQ&Aサイト「DelegateCall」を運営する組織です。

今回は2018年4月に来日したLoom NetworkのCo-Founder Luke Zhang氏とJapan Marketing ManagerのMami Mordovets氏の独占インタビューをお届けします。

Loom Networkってどんなプロジェクトなのか?ブロックチェーンとゲームの未来はどうなるのか?色々聞いてきました。

Loom Networkの原点

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(写真左)Loom Network Co-founder CTO Luke Zhang、(写真右)同Japanese Marketing Manager Mami Mordovets

GameWith牧野(以下牧野):まずはLoom Networkについて教えてください。

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Loom Networkのサイトより

Loom Network Luke Zhang氏(以下Luke):Loom Networkは、開発者のUX向上を目指したプロダクトを提供している。
コアプロダクトとしては、イーサリアムサイドチェーンのプラットフォームがあります。これは大規模なゲームやソーシャルアプリを、DAppチェーンというアプリ専用のサイドチェーン上で稼働することを可能にするもので、イーサリアムのDAppsのスケーリングを実現します。
またブロックチェーンの知識がなくとも、フロントエンド開発者がDAppチェーン上にアプリ構築が可能になるようなSDK(開発者キット)や、EthFiddleなどの開発ツールの提供、またCryptoZombiesやDelegateCallといったサービスを通して、ブロックチェーン開発者コミュニティの発展にも貢献しています。

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Solidityオンラインレッスンの「CryptoZombies」
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ブロックチェーンベースのQ&Aサイト「DelegateCall」

牧野:Loom Networkの組織について教えてください。

Luke:全体で43名の組織です。うちエンジニアが75%くらい。そして日本のMamiのように4名のカントリーマーケティングマネージャーもいます。

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Loom Network Mami Mordovets氏(以下Mami):Loom Networkはアメリカ合衆国の会社なんですが、本部はタイのバンコクにあります。でも多くのメンバーはリモートで働いて、実際Co-Founderの3名(Lukeをはじめ、James Duffy氏、Matthew Campbell氏)もそれぞれ異なる国で働いています。

牧野:Loom Networkが立ち上がったきっかけについて教えてください。

Luke:Co-Founderの3人は別々のDApps(※DApps=分散型アプリケーション。ブロックチェーン上で動くアプリケーション)のプロジェクトに関わっていた。

そもそもブロックチェーン、Ethereumはスケーリングに問題があると思っていて、これをどうにかしなきゃって思ったんだけど、Ethereum財団のPlasmaとかがその問題を解決しようとしている。(※Plasma=Ethereumのスケーリングを解決するプロジェクト。Ethereumのブロックチェーンとは異なるサイドチェーンでのトランザクションを行い、Ethereumのスケーリングを目指している)

もっと考えてみると、これからブロックチェーンでどんなことがポピュラーになっていくかというとSNSとかゲームが当てはまると思ったんだ。でもPlasmaではゲームやSNSのサービスに対応したスケーリングの問題は解決できないのではないかとも考えた。だからLoom NetworkではEthereumでゲームやSNSを作ったり、楽しんだりするためのスケーリングを解決しようと思った。

対象として領域を狭めることで、OmiseGo(※Loom Networkと同じくタイのバンコクに本部を持つEthereumのプロジェクト。金融機関を利用していない人でもネットワーク上で様々な通貨を価値としてやりとりできる。)のように大規模な開発チームを作らなくても始めることができると思ったんだ。

牧野:なぜゲームがポピュラーになると思ったのですか?

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Lukeまずゲームは全てがデジタルアセットで完結すること。ブロックチェーンの特性としてお金をトークンとしてプログラミングできる。ゲームも全てがデジタルアセットだから相性がいい。

そしてゲームは熱狂的にプレイされていることも理由の一つ。ゲーム以外の領域はユーザーに「これはこういうサービスです」って説明しないと使ってもらえない。ブロックチェーンを使ったゲームならゲームで得たトークンやアセット(スキンやカードなどのアイテム)を交換することで資産を増やすことができる。つまり稼げるようになる。既存のゲームだと熱狂的にプレイしても稼ぐことは難しいから、ブロックチェーンのゲームが増えればそういうプレイヤーも出てくるよね。

牧野:CryptoKittiesなどブロックチェーンで動くゲームがすごい増えてますよね。

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CryptoKitties

Luke:CryptoKittiesの場合、ブロックチェーン技術が限定的だから、デジタルの猫を交換するだけのゲームだよね。ブロックチェーンゲームを作る、動かすためのインフラがもっと技術的に高度であればRPGでプレイヤー同士がキャラクターを貸し借りすることも可能だよ。

例えばRPGをやりたいと思っても仕事が忙しくて1から進めることができない人もいるよね。ブロックチェーンのゲームであればトークンを支払って、RPGを進めている人からキャラクターを借りることで早くゲームを進めたりもできるんだ。

それからブロックチェーンのゲームでは、ユーザーのアクションに対して「賭け」をすることもできる。なんでできるかっていうとブロックチェーンのゲームではユーザーのアクションは全てスマートコントラクトに記録されているから。(※スマートコントラクトはEthereumなどのブロックチェーン上でプログラムを履行する概念)つまり賭け事をするときに正しいデータをもとに誰に賭けるかを決めれるんだ。

あとはゲームアイテムの取得率も明瞭になる。例えばレアアイテムの取得率が1%なら1%だし、そのプログラムの改ざんができないから。

CryptoZombiesはなぜ生まれたのか

牧野:Loom NetworkといえばCryptoZombiesですが、CryptoZombiesをリリースした理由は?

Luke:CryptoKittiesがリリースされた後にCo-FounderのJamesがMediumで記事を書いたんだ。

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2017年12月にリリースされたMediumの記事は多くの人がシェア

この記事ではCryptoKittiesがどうやって作られているかを解説しているんだけど、数万人に読まれて、多くの人がブロックチェーンのゲーム開発に興味があることがわかったんだ。

それにCryptoKittiesのコピーのようなゲームがたくさん出てくることも簡単に予想できた。(実際2017年12月から現在に至るまで多くの「〇〇育成ゲーム」が乱立している。)

そうなると、今度は「どうやってゲームを作るか?」に関心が集まると思ってCryptoZombiesをリリースすることにしたんだ。CryptoZombiesなら完全にブロックチェーンで動くゲームを開発するに必要なSolidity言語をステップごとに学ぶことができるよ。

牧野:なるほど。ではDelegateCallは?

Luke:CryptoZombiesはリリースしてすぐに10万人以上に使われるようになった。でもCryptoZombiesに関する質問がTelegram(※Telegramは通信速度とセキュリティが高い基準にあるメッセージングアプリ。ブロックチェーンのプロジェクトの多くはTelegramで情報交換をしている。)で沢山くるようになって、流れてしまっていた。この情報をブロックチェーン上に記載しておくような場所が作りたくてDelegateCallを作ることにしたんだ。

これは実験的な取り組みだと思っていて、Stack OverflowとかredditとかQ&Aサイトはたくさんある。またブロックチェーンを利用したものだとsteemitもあった。(※。steemitはソーシャルメディアプラットフォーム。投稿されたブログ記事に対して評価をつけることができ、記事執筆者は評価されるとトークンを受け取ることができる。)

実際にDelegateCallは完全にブロックチェーンで動いているサービスで、Loom NetworkのDAppチェーンで稼働しているんだよ。(※DAppチェーンはEthereumのメインチェーンではなく、サイドチェーンとして動いている。)既存のWebサービスにブロックチェーンを組み合わせて、報酬が支払われる仕組みがあるだけで、ユーザーの行動も変わってきていると感じている。

牧野:CryptoZombiesは昨年の12月、DelegateCallは今年3月ととてもスピード感がありますね。今後のロードマップを教えてください。

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Luke:この質問はよく聞かれるよ。僕たちは「情報を出さずに、とにかくプロダクトを開発して届けること」にこだわっているんだ。(※実際Loom NetworkのプロジェクトはICOをしていないし、ホワイトペーパーもない。)ブロックチェーン関連の企業のほとんどは大きな計画、ビジョンを語るけど、プロジェクトのリリース日がどんどん遅れたりしていて、実際のプロダクトがユーザーに届けられていない。僕たちはとにかくプロダクトを世の中に出していきたいと考えている。

それからブロックチェーンの関連プロジェクトはOmiseGoのような200人規模で運営する大きなプロジェクト、そしてscam(詐欺)プロジェクトのどちらかということが多い。伝統的なスタートアップのように2-3人でプロジェクトを立ち上げるっていうことが少ない。だから僕達は普通のエンジニアが、少人数でもブロックチェーンでビジネスが展開できるようにブロックチェーンゲームのSDKを提供するんだ。

Loom NetworkのSDKもベータ版の公開が近づいている。今はアルファ版があって、ユーザーは限定的なんだけど、2018年6月にはパブリックなベータ版を公開する予定。SDKの利用に継続的な支払いはいらなくて、LOOMのトークンを一回買うだけで使えるんだ。Loom NetworkのSDKはLoom NetworkのDAppチェーンで動くゲームを作ることができる。だからDAppsを作るときに面倒になるインフラ周りはLoom Networkに任せて、フロントエンドの知識があればゲームを開発することができる。

そしてゲームを3つリリースするよ。
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1つ目はカードゲームの「CryptoZombies Battlegrounds」。これはハースストーンのようなゲームでデッキを構築してPvPでカードバトルができるゲームなんだ。カードはブロックチェーンでトークンとして取引もできるので、トレーディングもできる。

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2つ目は「The Adventures of EtherBoy in Blockchain World」。これは横スクロールのゲームでDAppチェーンに状態を保存できる。アイテムや報酬をDAppチェーンからEthereumのメインネットに送ることもできる。

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3つ目は「CryptoZombies Rancher」。ポケモンスタイルのバトルゲームで、ゾンビを育てたり、クローンを作ったりすることができる。全てのバトルがDAppチェーン上で記録されることや、Ethereumのメインチェーンとクロスチェーントランスファーなどの技術が用いられているよ。

それからCrypto Zombiesがハードフォーク(※ハードフォークとは新しいルールによるブロックチェーンに移行するということ。反対にソフトフォークは新しいルールが追加されるが、古いルールも利用可能)する。これはアナウンス済みで、Loom NetworkのDAppチェーンに移行するんだ。ハードフォークしてDAppチェーンに移行することで、DelegateCallはCryptoZombiesと連動させることができるようになる。

CryptoZombiesの学習状況は全てDAppチェーンに記録されるため、全ての人がお互いの学習状況を見ることができる。DelegateCallにその学習状況を反映させることで、質問者は回答者の学習状況を見ることができ、回答の内容だけではなく、「誰が回答しているのか」によって回答の質を判別できるようになる。

そしてさらにDelegateCallは各言語にローカライズを予定していて、ジョブボードも登場する。つまりユーザーはDelegateCallの履歴とCryptoZombiesの履歴をジョブボードでのアピールポイントとして使うことが可能で、キャリアチェンジに利用することができるんだ。

牧野:盛りだくさんですね。しかもこれらは3ヶ月くらいの間に行われるんですね。ブロックチェーンのビジネスをするLukeから見て、今この業界に身を置くことのメリットはどういうものか教えてくれませんか。

ブロックチェーンはインターネット黎明期と似ている

Luke:ブロックチェーンの世界は1990年代のインターネットが登場したときと似ている。そしてエンジニアにチャンスが巡ってきていると感じているよ。

Webサービスやアプリの開発についてはシリコンバレーが中心になったけど、ブロックチェーンはそうじゃない。特にアジアの開発コミュニティには注目しているよ。日本はSuicaのような電子マネーの導入も早かったし、文化背景としても新しいサービスを生み出す要因になると思っている。

牧野:ありがとうございます。最後に日本のエンジニアにメッセージをお願いします。

Luke:Loom Networkのコミュニティ規模が日本よりも大きい国は他にもあるけど、日本コミュニティの発言力とエンジニアリングの質はとても高いと感じている。先にも言ったように電子マネーを早くから使っているし、それから関連法規も成熟しているからScamが出にくい。

僕は3年くらい大阪に住んでいたこともあるんだけど(※Lukeは日本語が上手)、日本のWeb開発のコミュニティはカリフォルニアのコミュニティと比べて活発じゃなかった。だから日本にいても日本以外の国の人と交流していたんだ。でもブロックチェーンによって今やアメリカに負けないくらいのチャンスが日本では作られている。そしてそのチャンスに開発者の多くがアジャストしてくれたら嬉しいと思っているよ。

最後に

Lukeが話すようにブロックチェーンのエンジニアリングに今身を置くことはとてもチャンスだと言えます。例えばEthereumの開発コミュニティなども日本は活発に稼働をしている印象があります。

ブロックチェーンに興味があるエンジニアの方はぜひCryptoZombiesで勉強してみはいかがでしょうか。

ブロックチェーンゲームハッカソンを開催!

今回取材したLoom NetworkとGameWithが共催で「ブロックチェーンゲームハッカソン」を開催します。本ハッカソンではLoom Networkが開発中のSDKを使い、ブロックチェーンゲームを開発します。

本文でも書いたようにSDKは現在目下開発中のもので、世界で初めて触ることができる場がこのハッカソンとなります。

詳細や参加申し込みはConnpassにて案内しています。ぜひチェックしてみてくださいね。

ブロックチェーンゲームハッカソン by LoomNetwork×GameWith

牧野拓也
人事部所属、GameWith Magazine編集長。1989年生まれ、愛知県出身。2018年3月より現職。
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