「DAppsに重要なのはUX」QuantstampのCEO Richard Maが語るDAppsエンジニアに知ってほしいこと

こんにちは。GameWith人事部の牧野です。

Ethereumで動くDApps(分散型アプリケーション、Decentralized Application)を作るには必ず必要不可欠となるのがスマートコントラクトです。スマートコントラクトはメインネットにデプロイされると修正することが難しいため、脆弱性やバグの検証が重要となります。

Quantstampはスマートコントラクトの脆弱性やバグを検証するセキュリティプロトコルや自動テストツールを提供しています。今回はQuantstampのCo-founder&CEOのRichard MaにQuantstampの着想の原点やDAppsの開発に必要な考え方についてインタビューしました。

Quantstamp, Inc. CEO and Co-Founder Richard Ma (リチャード・マ)
2010年 Cornell大学卒業2010−2017年 フランクフルト、サンフランシスコにて、クォントトレーダーとして活躍。2015−2017年 Tower Research Capitalにて、Senior Quantitative Strategistとして従事。2017年7月 Quantstamp, Inc.を設立。

信頼できるスマートコントラクトを

牧野:Quantstampのアイデアの源泉を教えてください。

Quantstamp_site

Richard:元々はHigh Frequency Trade(HFT、高頻度取引、コンピュータで自動的な株のやりとりを実施するシステム)のソフトを開発する仕事をしていたのでソフトウェアのセキュリティについては昔から敏感だった。なぜならばクライアントから多額のお金を預かってマネジメントしているから、プログラムがハッキングされたらクライアントに損失を与えてしまうことになる。

スマートコントラクトはそういったシステムをさらにスケールアップしたものだと考えている。プレイヤーは世界中に広がっているし、扱っている金額も桁が違う。

Quantstampで実現したいことは、投資家やユーザーがスマートコントラクトを信頼できるようにすること。ブロックチェーンってDecentralized(分散化)だったり、トラストレスな経済圏を創出するだったり、様々なキーワードで注目を浴びている。でも実現するためにはスマートコントラクトが必要で、その中身が信頼に足りうるのかの見極めがつかない。僕自身、以前に「The DAO」の一件に巻き込まれたこともある。(Ethereumの自律分散型組織としてファンディングを行なっていた「The DAO」のプログラムの脆弱性がアタックされ、集まった資金の3分の1が盗まれる事態となった)

HFTでのバックグラウンドとその一件を合わせて、投資家やユーザーが安心してブロックチェーンのサービスを使えるようにしたいと考えてQuantstampを立ち上げた。

特にDApps、例えば今スマートフォンで使うアプリはAppleのApp Store、GoogleのGoogle Playを通してでしか使えないよね。彼らが作るプラットフォームの中に限られている。DAppsはプラットフォームに縛られずにユーザーに使われるようになっていくとは思うんだけど、App Storeのように審査がないままアプリをリリースされたらユーザーはそのアプリを信頼する術がない。だからQuantstampを通してスマートコントラクトやDAppsの設計自体を検証して、ユーザーが安心安全にDAppsを使えるようにしたいと思っている。

牧野:直近でのAudit(監査)の事例を教えてください。

Richard1

Richard:仮想通貨取引所のBinanceにリスティングされているトークンをAuditした。ERC20にInteger Overflow Bugが発見された時にBinanceから直接依頼があってAuditをした。数百種類のトークンが対象で、流通額でいうと数千億円になる規模だったけど、Quantstampは36時間でAuditを完了させたんだ。

牧野:たったの36時間ですか。

Richard:そう。QuantstampはAuditのスピードが速い。それには人材が最も重要で、QuantstampにはFormal verification(形式的検証)に長けているエンジニアが多く在籍している。検証に使うオープンソースのツールはあるけど、使いこなす人材が重要なんだ。また自動化ツールも開発しているので効率性も高めている。

牧野:Quantstampのロードマップを教えてください。

Richard:8月末に今はテストネットのQuantstampをメインネットでローンチする予定。その時にはセキュリティプロトコルも同時にリリースする。また2018年内にはQuantstampのメインネットとEthereumのDAppsを繋げるAPIもリリースする予定。DAppsのソフトウェアにアップデートがある度にQuantstampのセキュリティプロトコルが起動して、アップデートに脆弱性がないかを自動的にAuditする仕組みになる予定だよ。

DAppsに重要なのはUXと楽しさ

牧野:DAppsとの連携は楽しみです。Richardが注目しているDAppsを教えてください。

Richard:3つのカテゴリを注目していて、まずは「ゲーム」。その中でも最も注目しているのはCryptoKittiesだね。Co-founderとも友人なんだけど、彼らの特徴はUXを最重要なテーマにしていることなんだ。ユーザーがほしいゲームを研究してから、実装をしている。後はEtheremonETH ONLINEも注目している。個人的にポケットモンスターやFinal Fantasyの世代だから、DAppsで昔遊んでいたようなゲームができるのは楽しみだね。

2つ目はDEX(Decentralized Exchange、分散型取引所)。DEXは既に多くの人が利用しているし、多くの金額が流通している。注目しているのはKyber Network0xidex。DecentralizedじゃないけどOpen Seaも今後が楽しみだね。

3つ目はインフラDApps。DAppsを開発する時に必要になる要素を持つDApps。例えば債券のトークン化ができるDharmaとか、組織運営の効率化を促すAragonとかは要注目だと思う。

牧野:DAppsを開発したいというエンジニアが日本国内でも増えています。今後のDApps開発でポイントになりそうなテーマを教えてください。

Richard2

Richard:まず最も重要なことはUX。エンジニアは技術力に熱中しがちだけど、ユーザーが使いにくいものだったり、ニーズがないものを作っても意味がない。技術力はもちろん大事。でもDAppsをより簡単に使えるように、UXを設計して形にすることが何よりも大事だと思う。それとユーザーが面白い!と思うものを作らなきゃね。

次にドキュメンテーションが未整備であること。EthereumのDApps開発は世界中で行われているけど、誰かがドキュメントを管理しているわけじゃないから、内容がバラバラ。Ethereumのコア自体開発がどんどん進んでいるし、エンジニアがEthereumやその開発ツールのトレンドに追いついて行かないといけないね。

3つ目としてフリーミアムモデルのDApps。特にDAppsゲームの場合、どんなゲームでもETHがないとはじめられないよね。今後伸びるDAppsゲームはfree to playだと思う。ユーザーはブロックチェーンが使われているゲームという認識でプレイするんじゃなくて、「楽しい」からプレイする。その結果としてデジタルアセットが手に入って、Ethereumで所有することができるようなストーリーが描けるとユーザーの参加ハードルは下がると思う。

今Ethereumを保有している人は投資家目線の人がほとんど。DAppsゲームを作るとしたら投資家も若いゲーマーもどっちにも受け入れられるものを作らないといけない。そういう意味ではCryptoKittiesはEthereumのメインネットに渋滞を発生させるくらいのトランザクションを生み出したから一つヒントになるDAppsだとは思う。キラーアプリと言えるようなDAppsはまだ生まれていないから、これから出てくるといいなと思っている。

牧野:DAppsはまだまだこれからってことですね。

Richard:DAppsって100%ブロックチェーンに乗せる必要はないんだよ。そのアプローチは間違っている。今何百万人が遊ぶ有名ゲームが、その一部の機能だけブロックチェーンを活用するとかそういう部分的なアプローチが正しいと思っている。ブロックチェーンの利用はgas(手数料)も必要だし、トランザクションのスピードはまだ遅いからUXも悪くなる。

DAppsがもっと世の中に広がるには部分的なブロックチェーン活用で、キラーアプリが出てくるんじゃないかな。逆に言うとまだ出てきてないから、有名になりたい人、リスクテイクできる人はどんどんブロックチェーンの業界に来てほしいと思っているよ。

牧野拓也
人事部所属、GameWith Magazine編集長。1989年生まれ、愛知県出身。2018年3月より現職。
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