「サーバがイケてるからゲームが面白くなるわけじゃない」Game Server Services丹羽一智氏インタビュー

こんにちは。GameWith人事部の牧野です。

一般的にスマートフォンゲーム(スマホゲーム)などのインターネットを使用するゲームを開発するときに必ず必要になるのが「サーバ」です。ゲームによってサーバの設計仕様は様々ですが、ユーザー数やアクセス数に応じたスケーラビリティが求められたり、ユーザーがスムーズにゲームを遊ぶことができるスピード性が求められたり、またはセキュリティも求められたりします。

しかしサーバの設計、構築には多くの時間や人材、お金が必要になり、昨今では資本力が少ない企業では第一線で流通するようなスマートフォンゲームを開発することが難しいという声も聞こえています。

2018年3月にGameWithが出資を行ったGame Server Services社(以下GS2)はそんなゲームのサーバ構築の課題を解決する会社です。

今回はGS2がどんなソリューションを提供しているのか、またGS2が生まれた背景を同社代表へのインタビューを通してご紹介します。

GS2とは?

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まずはGS2のサービスについて簡単に紹介します。GS2はゲーム開発者向けにサーバレスアーキテクチャを提供しています。

スマホゲームではアカウント管理、ゲーム内通貨管理、マッチメイキング、チャット、スタミナ管理などの機能ごとにサーバを構築していきます。GS2では開発したいゲームの仕様に合わせて好きなコンポーネントを選ぶ形で簡単にサーバ構築を行うことができます。またGS2は初期費用無しでサーバリクエストの数と費用が連動する形となっています。そのためアクセス予測の難しいスマホゲームのサーバ開発・運用にかかる費用を最適化することも可能になります。

GameWithは2018年3月にGS2の第三者割当増資の引受を決めています。

GS2代表インタビュー

ではここからはGS2の代表、丹羽 一智氏(以下丹羽)へのインタビューを通してGS2が生まれた背景や何故ゲームにサーバレスアーキテクチャが必要なのかをお話します。

ドリームキャストで出会ったインターネット

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丹羽 一智(にわ かずとも) – 代表取締役社長 CEO
ゲームメディアを専門に京都コンピュータ学院を卒業後、株式会社セガに入社。携帯電話向けのゲーム開発 および サーバ開発業務に従事。
その後、任天堂株式会社にて ゲーム機本体のOS/SDKの設計・開発、ゲームサーバの設計・開発・運用業務に従事。
約10年におよぶゲーム開発・大規模ゲームサーバ開発の経験を活かし、ゲームサーバ基盤 Game Server Services の開発・拡大を推進。

牧野:丹羽さんのゲームとの出会いを教えてください。

丹羽:ゲームは物心ついた頃からやっていました。親がゲームが好きでファミコンが家にやってよくやっていました。初めて遊んだゲームは覚えていませんが、初めて自分のお小遣いで買ったゲームは「星のカービィ 星の泉の物語」だったことは覚えています。小学校1年生くらいだったと思います。

最近やっているゲームだと「ファイナルファンタジーXIV」ですね。久々に長くはまっているゲームです。GS2を起業したタイミング(2016年)でプレイする時間がなくなったのですが、昨年拡張パッケージがリリースされて改めてプレイしても先頭集団に追いつけるくらいまでになったので、リテンションについても非常に考えられたゲームだと感じています。

牧野:セガ、任天堂とゲームメーカーのキャリアを歩まれていますが、ゲーム業界に入られた経緯を教えていただけますか?

丹羽:私が中学校1年生の頃にドリームキャストが登場しました。ドリームキャストを通してはじめてインターネットに出会ったんです。これが人生の中で大きなポイントでした。

IRCのチャットで遊んでいて、そこには様々なコミュニティがあって、ゲームが好きな人だったり、プログラミングをしている人だったりといろんな人が身近な存在になりました。同じ基地局に繋げばパソコンでも使えるんじゃないかと思ってパソコンでインターネットを使い始めました。パソコンでインターネットに接続することで、より出来ることが増えました。

中学校3年生になった頃にプログラミングをはじめまして、高校1, 2年生くらいにドコモのiアプリが登場したんです。iアプリって当時は容量制限が10キロバイトとかでした。しかも言語がJavaなのでプログラムをビルドするだけで3キロバイト必要になり、実質7キロバイトの容量で何ができるのかっていうのを色々試していました。iアプリは開発ツールが提供されていましたし、自分の携帯でも遊べることもモチベーションに繫がりました、さらにはインターネットで多くの人にアプリを配布できます。そこで私もiアプリのゲームを作るようになりました。

高校を卒業する頃にはゲーム業界を志望しており、コンピュータの専門学校に進学しました。どうしたらゲーム業界に就職できるかを考えてたんですが、iアプリのゲームは常にインターネットと繋がっていました。Xbox Liveもはじまった頃でした。そこで、私は「今後、ゲームにはネットワーク機能が必要不可欠になる」と考えていました。

今のゲームの開発者の中にネットワークに詳しい人間は少ないだろうと思って、ゲームとネットワークの2つの軸で技術力を身につけることができればゲーム業界への就職はできるんじゃないかと思いつき、専門学校に通いながらベンチャー企業でネットワーク機能の開発などもしながらネットワークの勉強をはじめました。

新卒でセガに入社したのですが、ドリームキャストが私にとっての大きなポイントだったので縁があったのかもしれません。入社してからは携帯電話向けゲーム開発の部署に配属され、オンラインゲームのカジノ機能の開発などに携わりました。携帯のゲームで獲得したゲーム内通貨がPlayStation2やPCのゲームでも使えるようなゲームでした。

任天堂に転職をしたのは当時Wii Fitがリリースされたくらいのタイミングでした。ネットワーク開発部に配属されまして、ニンテンドーDSのポケットモンスター ブラック・ホワイトのサーバ構築の仕事を担当していました。クライアントサイドのSDKの開発もしましたね。

それからニンテンドー3DSの開発が始まり、OSとSDKの開発をする必要が出てきたため、主にネットワーク機能の開発にも携わりました。アクセスポイントへの接続処理を担当しました。その後マッチメイキング、ランキングといった汎用ゲームサーバを担当しました。

またゲーム開発会社からのゲーム開発申請を受け、ネットワークの使い方についてのヒアリングやアドバイスをする仕事も担当していまして、一番最後はSwitchの開発にも携わっていました。その後退職をしてGS2を設立しました。

スマホゲーム開発にチャレンジしたい会社を助けたい

牧野:GS2のサービス着想に至った経緯を教えてください。

丹羽:任天堂在籍時にゲーム開発者向けの汎用ゲームサーバを開発していました。汎用ゲームサーバがあることで、ゲーム開発会社はサーバ構築したり、運用をしなくてもネットワーク対応型のゲームを作ることができます。

また同じ時期にソーシャルゲームが流行しはじめました。iPhone4が出た頃から「フィーチャーフォンからスマートフォン」へのシフトが始まる予感はしていて、実際ゲームの主戦場もスマホに移行しました。

当時のスマホゲームって家庭用ゲーム機のものと比べるとクオリティは高いと言えなかったのですが、パズル&ドラゴンズ(パズドラ)が出たタイミングでブラウザではなく、ネイティブアプリのゲームが登場しだして潮目が変わったのを覚えています。

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スマホゲームはWeb制作を本業とする会社がブラウザで動くゲームを作ることが多かったのが、パズドラの誕生によってネイティブアプリのゲームが増えました。ネイティブアプリの開発の為に家庭用ゲーム開発経験のある人材を採用するなどして、ゲームに必要な演出やクリエイティブの質を向上させてきましたが、家庭用ゲーム開発者はプラットフォーマーが提供する汎用ゲームサーバを使った開発が多かったため、自前でネットワークやサーバを構築するノウハウが少なかった。

私が任天堂に在籍している時にも、多くのソーシャルゲームがリリースされていましたが、ほとんどのゲームがローンチ直後にサーバダウンしてたんですよね。過渡期だからしょうがないのかなって思って見てたんですけど、何年経っても一向に改善されないままでした。

牧野:原因は何だったのでしょうか?

丹羽:各社がそれぞれゲームサーバを構築しているのが問題だと思っています。それだと問題点やノウハウが共有されないので。また同じ会社の中でもゲームタイトルが変わるとゼロからサーバを構築しています。新しく作ると当然バグも新しく生まれるので、改善していくサイクルを作らないと障害は無くならないです。そもそも同じような目的のサーバをスクラップ&ビルドで作り続けることは無駄です。またゲームはサーバのトラフィック予測が難しく、サーバの費用をどこまで見積もればいいかが判断しづらい。またサーバ開発のノウハウを持つ開発者が少ないため、外注で賄おうとしますが、売上の予測も難しいため費用を回収できるかどうかわからず、思い切った判断が難しいです。

そんな様子を外部から眺めていて、誰かがスマホゲームに適した汎用ゲームサーバを作らないといけないと感じていました。そのまま時が流れて2015年、サーバレスアーキテクチャが登場し、AWS Lambda がリリースされました。その後、API Gateway が登場し、AWS Lambda を HTTPアクセスで使えるようになりました。これを見て、ゲームサーバに使えるのではないか?と感じ、実際にスマホゲームを想定したゲームサーバを試作してみました。

作った結果、いくつか課題はあるものの、ゲームサーバとして使えそうだと感じましたし、トラフィックに応じたサーバ利用となるので料金的にもビジネスになり得ると感じました。仕組み的にも大量アクセスが起きても問題ありません。

元々スマホゲーム向けの汎用ゲームサーバがあれば喜ぶ人がいるのだろうな。とは感じていましたが、料金面でビジネスにならないと思っていたため、従量課金の AWS Lambda の登場はGS2の実現の大きなポイントでした。

牧野:GS2では「パズドラ」や「モンスト」のようなゲームをサーバレスで開発できるようにしたいと伺いました。

丹羽:セールスのランキングを見ていてもパズドラが作ったゲームのフォーマットが日本国内では広く受け入れられていて、そこは外せないと思っています。反対に言うとスマホゲームの開発をしたことがなくて、これからチャレンジしたいと思っている会社からすると勝率が高いゲームフォーマットだと言えます。

スマホゲームの開発にチャレンジしたいけどできない会社の中には、資金面の問題もありますが、サーバやネットワークのノウハウ不足である面の問題もあると思っています。GS2を使ってパズドラのようなヒットが期待できるゲームを開発できるような形をまずは目指しています。

牧野:スマホゲームの開発経験がない会社がターゲットということですが、そういった会社の課題は何でしょうか。

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丹羽:家庭用ゲーム機のゲーム開発をしている会社の場合、下請けとして仕事を受けていることが多く、自社でゲームを運営して、ビジネスを回していくというスタイルが身に付いていないことが見受けられます。

家庭用ゲーム機のゲームは開発スペックがどんどん高くなっていて、開発者に求められる技術力はどんどん高くなってきています。一部では技術的についていけない。と思っている開発者がいると聞いています。

そうなるとスマホゲームということになりますが、家庭用ゲーム機と違ってスマホゲームはパブリッシャーを通さなくても配信出来るんですよね。当然、IPやプロモーションといった課題はありますが、それでも自立したビジネスをできるようになるチャンスはまだまだある市場だと思います。

サーバレスでこれまでにないゲームが産まれるように

牧野:丹羽さんのお話を伺っていますと、ゲーム開発会社やゲーム開発の技術者への強い熱意を感じます。具体的にゲーム開発の業界をどのように発展していきたいですか。

丹羽:レンタル型ゲームサーバを提供している会社は世界で数社程度。日本では弊社だけというのが現状です。海外と日本のゲーム開発業界を見てみると、日本の開発者は目の前のことを「改善」することが得意です。海外の場合は「全体最適」で開発を進めることが得意です。

過去にゲーム開発の現場ではこの民族性によって苦い経験をしていて、かつて日本のゲーム開発はゲームごとにゲームエンジンを開発していました。PlayStation2 あたりで日本のゲーム開発は開発コストが上がり続けるも、国内販売が伸びない状態に直面しました。PlayStation3 あたりで限界が来て、日本では手堅いタイトル開発しか出来ない状態に陥っていました。その頃、海外ではUnrealEngineのような全体最適をうまく使ったゲームエンジンが登場して開発コストを下げ、多彩な発想でゲームの中身やクリエイティブに資金を投下した良質なゲームがたくさん発売されるようになりました。やがてその品質が国内でも認知され、海外で開発されたゲームが日本で多く売れるようになりました。昔は新作ゲームに海外のゲームが並ぶことは少なかったのですが、最近では日本のゲームが少ないくらいにゲームチェンジが起こってしまいました。

UnrealEngineだけではなくゲーム開発ではUnityは欠かせない存在になっていますよね。かつて「作る」ものだったゲームエンジンが「使う」ものに変わったわけです。日本人が得意としない全体最適の分野ですが、任天堂でプラットフォーマーという、全体最適の求められる立場で仕事をしてきた経験を生かして、ゲームサーバも同じような形で「作る」ものではなく、「使う」ものになるようゲームチェンジを起こしたいと思っています。

ゲーム業界を最前線で走り続けられる環境を今後も日本に残したいですね。

牧野:サーバレスアーキテクチャがゲーム開発にもたらす影響は何でしょうか?

丹羽:任天堂は様々な汎用ゲームサーバを提供することによって、ずいぶん昔からサーバレスアーキテクチャ的な開発環境を提供していました。ゲームサーバも柔軟で、対応ゲームの種類は非常にバラエティに富んでいます。汎用ゲームサーバだと同じようなものしか作れない。ということはなくて色々なゲームが作れるんです。

極論を言えば、ゲームサーバがイケてるからゲームが面白くなるわけじゃないんです。もちろんユーザーのアクセスに耐えうるサーバ設計、UXを考慮したサーバ設計は最低限必要です。しかし、ゲームサーバの設計や構築、さらには運用をゼロから立ち上げるとなると労力も金銭コストもそれなりにかかります。でもゲームの中身に与える影響は限定的です。

ゲーム開発会社はサーバレスアーキテクチャを活用してゲームを面白くすることに労力や金銭コストをかけることができるようになると思っています。
ゲーム会社には様々な戦略があると思います。ただこれまで出てきていない新しいゲームフォーマットやキラーアプリを産み出すのは、新しい会社だと思っています。これからスマホゲームでチャレンジをしたい、という会社を支援できるようなサービスを作って行きたいと考えています。

AWS Summit 2018でも入賞

今回取材したGS2がAWS Summit 2018で開催されたStartup Architecture of the year 2018にてオーディエンス賞を受賞しました。

ぜひ今後のGS2にご期待ください!

GS2の詳細はこちらから

牧野拓也
人事部所属、GameWith Magazine編集長。1989年生まれ、愛知県出身。2018年3月より現職。
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