「Web3.0はWeb2.0を否定するものではない」起業の科学著者田所雅之が語るWeb3.0の姿とは

こんにちは。GameWith人材戦略部の牧野です。

皆さんはWeb3.0という言葉を聞いたことがありますか?GoogleやFacebookといったインターネット時代の覇者が大きなパワーを持つ現代をWeb2.0とし、その次の世代と考えられているのがより分散化されたインターネットとなるWeb3.0です。

今回は「起業の科学」や「スタートアップサイエンス」の著者、田所雅之氏と一緒にWeb3.0がどんな世界になっていくのかを考えてみました。

Web3.0とは

まずはWeb3.0について簡単にまとめてみます。

Web3.0には明確な定義はありません。Web3.0の考察はMatteo Gianpietro Zago氏のWhy the Web 3.0 Matters and you should know about itに詳しく記載があります。また同ブログの日本語訳としてはメルミライさんのWeb 3.0の6つの特徴があります。

Matteo氏のブログによるとWeb1.0からWeb2.0は以下のような区分けがされています。

Web1.0:静的なウェブサイトの集まり。観察型。一方向。
Web2.0:速いインターネット。参加型。双方向。

Web2.0は速いインターネットによってユーザー自身がコンテンツを作って、発信して、読むことを容易にしました。最たる例がFacebookやTwitter、Youtubeなどのソーシャルメディアです。またGoogleやAmazon、Appleなどが高速インターネットに合わせたビジネスモデルを構築し、世界的な大企業にまで成長したのはみなさんもご存知だと思います。

Web2.0の現代ではパソコンやスマートフォンを通して世界中の情報にアクセスすることができ、店舗に足を運ばないと買えなかった書籍はワンクリックで家まで届くようになり、音楽も定額制で聴き放題になりました。

ではWeb2.0の次のバージョンであるWeb3.0はどんなものなのでしょうか。

同じくMatteo氏のブログではWeb3.0には6つの特徴があるとされています。

①非中央集権である
②エンドユーザーがデータの所有者である
③データ漏洩やハッキングの劇的な低下
④デバイスを問わず使うことが出来る
⑤参加に許諾がいらないブロックチェーン
⑥ダウンしないサービス

これらの特徴は裏を返すとWeb2.0の代表的なサービスが抱えている課題とも言えるかもしれません。Web3.0の代表的なサービスとしてオンラインストレージの「Storj」、ソーシャルネットワークサービスの「Steemit」、ジョブハンティングプラットフォームの「Ethlance」などが登場しつつあります。

このWeb3.0の世界はなぜ今広がろうとしているのか。そしてWeb2.0のどんな課題を解決するのでしょうか。

Web3.0はWeb2.0を否定するものではない

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田所雅之氏プロフィール:1978年生まれ。日本で3社、米国で1社のスタートアップを起業。日本に帰国後は、米国ベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーを務めた。スタートアップのアドバイザーなどを務めながら、事業創造会社ブルー・マーリン・パートナーズ(東京・港)のCSO(最高戦略責任者)、ウェブマーケティング会社ベーシック(東京・千代田)のCSOも務める。これらの経験を生かして制作したスライド集『スタートアップサイエンス』が国内外で大きな反響を呼び、50,000回以上シェアされる。2017年、ユニコーンファーム(東京・港)を設立し、スタートアップの育成支援に注力するとともに、国内大企業および外資系企業の新規事業開発アドバイザーを担い、経済産業省主催のスタートアップ支援プログラムの委員も務める。

牧野:田所さんは「起業の科学」でスタートアップの指南書とも呼べる本を執筆されました。今Web3.0についてはどのように思われていますか。

田所:Web2.0が可能にしたのは「情報の民主化」、そしてWeb3.0は「価値の民主化」を促すものだと考えています。

僕はWeb3.0はWeb2.0を否定するものではないと思っています。ちょうど最近GoogleがEUからEU競争法(独占禁止法)違反で制裁金を課されたニュースがありましたよね。またGDPR(EU一般データ保護規則)がWebサイトでのユーザー情報を取得することに規則を作りました。Facebookもユーザー情報を外部企業に提供していたと発覚するニュースがありました。GoogleやFacebookなど、いわゆるGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)はその大きな影響力を指摘されることが少なくありません。

しかし我々の多くはGAFAから大きな恩恵を受けていますよね。彼らのようないわゆるWeb2.0の覇者が存在していなかったら、トランザクションコスト(モノやサービスを売ったり買ったり運んだりするコスト、金銭以外も含む)は今と比べると高いし、一人ひとりの生産性も低いままのはずです。GAFAのような影響力を持つサービスが我々の生活に浸透しているため気づきにくいのですが、明らかに恩恵を受けています。

Web2.0の世界ではユーザーが中央管理者に対して自分の情報を差し出すことで欲しい情報を得るという仕組みでした。これに歪みが生じているのは確かです。

牧野:Web2.0の歪みとは?

田所:FacebookやInstagramなどのソーシャルメディアのビジネスは広告モデルです。KPIとなるのはPVとセッション時間になります。そうなるとユーザーがより多くの投稿を長い時間見てもらうようなサービスにする必要がありますよね。そのためにはユーザーが関心のない投稿は表示させずに、興味の湧く投稿だけを表示させる必要があります。そこにリコメンデーションの技術があるわけです。これはユーザーにとっても良いことですが、手にとる情報には偏りが生じるため、本当に「情報の民主化」が行われているのかを懐疑的に感じているユーザーも多いことでしょう。

Web2.0の現代においてGAFAとアリババ、テンセントを加えた6つのプラットフォームが圧倒的な強さを誇っています。プラットフォームはその強さが故にアプリケーションの開発者に対する関所料のコストが高いですよね。AppleのApp Storeであればアプリ内の課金の30%がかかります。さらに利用するユーザーの個人データもプラットフォームが利用します。

こういった情報の民主化と個人のプライバシー、そしてビジネスモデルにおいて歪みが現れはじめているのではないかなと。

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ただ一つ言えることは「価値の民主化」のためには「情報の民主化」が必要だということです。価値を交換するためには情報の非対称性を解消する必要があって、そのためには情報を交換する仕組みが必要になります。Web3.0の世界では分散型のアプリケーションやサービスが浸透してユーザーがそれぞれ主体者になり、トランザクションを直接ユーザー同士で発生させることができます。でもどのアプリケーションを選べばいいのか、という意思決定をするための情報を取得する必要があります。そうなるとWeb2.0が実現している情報の民主化をもっと推し進める必要もあるのではないかと考えています。

Web3.0の世界になって例えばブロックチェーンを活用したサービスを利用したり、ICOに参加することが一般化するとしましょう。そのサービスやプロジェクトの与信はどうやって評価するのか、そもそもどうやって見つけるのか。それにはGAFAに代表されるWeb2.0のプラットフォームが使われると思います。というのもWeb3.0は物事の主体が人間だからです。IoT、AI、エッジコンピューティングが一般化されてくると、もはや物事の主体が人間ではなくなるかもしれません。その時はWeb3.5と言うのかわかりませんが、Web3.0までは主体が人間だと思うのでWeb2.0にWeb3.0が溶け込んでいくような形で広がっていくのではないかと思っています。

もちろんWeb3.0の世界はWeb2.0と前提が変わるので大きな変化であることは確かです。僕が執筆した「起業の科学」も「スタートアップサイエンス」もWeb2.0のお話です。Web2.0のスタートアップではとにかくユーザーデータを集めること、そしてリコメンデーションの精度を高めることが重要です。ただこういったモデルもあと10年くらいしか続かないと思っていて、僕自身「起業の科学 Web 3.0版」を書き出そうと思っていたんです。

Web 3.0とブロックチェーン

牧野:Web2.0とWeb3.0のビジネスモデルの変化は興味深いです。

田所:スマートコントラクトを用いて様々なサービスが「自動販売機化」するかもしれないですよね。今年になってブロックチェーン、特にスマートコントラクトによる自動化を活用した実証実験が世界中で行われていますよね。例えば電力。自宅の屋根のソーラーパネルで発電した電力を直接お隣さんに売電するような仕組みとかいいですよね。そうなると自宅の屋根が自動販売機化するわけです。現状は売電も電力事業者という中央管理者を必要とする仕組みですが、スマートコントラクトによって中央管理者を持たない分散型の仕組みを構築することができるかもしれません。

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個人的にはWeb3.0にIoT、エッジコンピューティングなどのテクノロジーが組み合わされることによってトランザクションの主体が人ではなくAIにとって変わる可能性も感じています。例えば自動運転。自動運転の車がパーキングできるスペースを探しているとしましょう。現状であれば街中のパーキングスペースの空室情報などを見て、パーキングエリアに向かいます。でもエッジコンピューティングで自動運転の車同士が直接トランザクションを起こすことができれば、車同士でパーキングスペースを与えたりもらったりすることができるかもしれません。

この時に重要なことはそのネットワークに参加する人に何かしらのインセンティブが発生することです。インセンティブがなければネットワークを利用して他人に使役するメリットがありません。またインセンティブが必要ということはコストも発生します。先ほどの自動運転車同士のパーキングスペースの譲り合いであれば、譲る人にインセンティブが。譲ってもらう人には何かしらのコストが発生するような形です。譲ってもらう人にとっては自分でパーキングスペースを探すコストが下回るなら使う必要もないわけです。ただ仮想通貨のような形でマイクロトランザクションが可能になれば、これまでの金銭的な支払い感覚ではなくなるため、コストに対する感覚が変わるかもしれませんけどね。

牧野:Web3.0の世界はどのように広がっていくのでしょうか。

田所:Web1.0ではYahoo!やebay、paypalなどがインターネットの波に乗りました。Web2.0ではGAFA、そしてアリババやテンセントが高速なインターネットとスマートフォンの波に乗ることができました。このようにパラダイムが変われば主役も変わります。例えばスマートフォンの波に乗ったわかりやすい事例がメルカリですよね。マーケットプレイスとしてはヤフオクがいました。そこにメルカリが参入するわけですが、ポイントはスマートフォンでしたよね。ヤフオクに商品を掲載するには、写真を撮って、パソコンにアップロードして、商品ページを作成する。早くても20分から30分はかかっていました。メルカリはスマートフォンで撮影から出品までを完結させることで時短に成功しました。この出品の手軽さがスマートフォンの波を利用した良い事例だと思います。

Web3.0においてもプラットフォームやデバイスなどのパラダイムシフトが起こるタイミングが来ると思います。そのタイミングで市場を再定義して、PMF(プロダクトマーケットフィット)したサービスが伸びてゆくのだと思います。

現状でいえばビットコインやEthereumというブロックチェーンが広がりを見せています。ブロックチェーンを使ったアプリケーションで言えばゲームも出てきていますね。Web3.0、価値の民主化を実現するサービスがどの分野から広がっていくのかはまだ未知数です。

個人的には情報の非対称性が高い不動産などの分野や、希少価値の高いモノのトレーサビリティなどの分野は導入が進む可能性があると思っています。イギリスのeverledgerという会社はブロックチェーンを活用してダイアモンドのトレーサビリティを透明化しています。ダイアモンドはどの採掘場で取れたのか、どの研磨場で磨かれたのかが不透明な現状があります。また盗難被害に遭う可能性もあります。everledgerはすでに100万個以上のダイアモンドをブロックチェーンでデータベース化しています。

2018年現在はブロックチェーンのトランザクションコストが高い(Ethereumのgasのような手数料だけではなく、開発なども含めたコスト)ため、実証実験が行われているフェーズです。このトランザクションコストと、Web2.0の歪みが交差するタイミングがいつになるのか。2030年くらいにはいくつかのサービスがPMFされていて、Web3.0から3.5に向かう時代になっているのかなと思います。

牧野拓也
人事部所属、GameWith Magazine編集長。1989年生まれ、愛知県出身。2018年3月より現職。
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