「すでにブロックチェーンは世界に爪痕を残している」DMMスマートコントラクト開発部篠原航氏インタビュー

こんにちは。GameWith人事部の牧野です。ブロックチェーン関連のニュースが連日目に入るようになって久しいですが、ブロックチェーンに携わるエンジニアの数はまだまだ少ない現状があります。

今回はDMMのスマートコントラクト事業部のテックリードとしてエンジニアの教育やブロックチェーンの啓蒙活動を行う篠原航さんにインタビューを行いました。

みんなブロックチェーンの可能性は感じているけど

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<篠原航プロフィール:DMMスマートコントラクト開発部テックリード レコメンドエンジンを開発後、Ethereumをはじめとするブロックチェーンの調査や開発を行なっている。書籍「ブロックチェーンアプリケーション開発の教科書(マイナビ出版)」を執筆。>

牧野:篠原さんがDMMのスマートコントラクト開発部に入られたきっかけはなんですか?

篠原:サイバーエージェントやNHNなどでエンジニアとして働いた後にDMMに入りました。CTO直下のチームでリコメンドエンジンの設計や開発を僕ともう一人のメンバーで担当していました。

その後スマートコントラクト開発部を立ち上げることになり、いまは20名程度のエンジニアの教育であったり、ブロックチェーンの技術動向のリサーチ業務を行っています。

多分ブロックチェーンの可能性を信じてる人って多いと思うんです。でもビジネスとして今すぐ成立するかっていうと難しい。とはいえこのタイミングでブロックチェーンに取り組まないと世界から取り残されてしまうという危機感が漂っていますよね。

ブロックチェーンで世界は変わる、ってよく言われることなんですけど、じゃあどうやってやるのっていう部分はどこも暗中模索をしている状態。その模索をR&Dとして早めにやろうよっていう部署がDMMのスマートコントラクト開発部になります。

我々は一旦ビジネスとしてではなく、テストとしてブロックチェーンで色々作ってみたりすることがミッションとなります。

牧野:開発部のエンジニアはブロックチェーンの開発に携わったことがある人が多いのですか?

篠原:いえ個人的に触って興味を持っていた者はいますが、ほとんどが未経験です。社内の他部署から公募で参画したメンバーが多くて、社外からの採用はごく一部です。

牧野:篠原さんがブロックチェーンと関わったきっかけはなんですか?

篠原:2014年に知人からBitcoinを教えてもらったのがきっかけです。仮想通貨やブロックチェーンについてずっと話をしてもらってたんですけど、よくわからなかったんですよね。送金しても10分立たないとお金は送られないとか。普通のお金でいいじゃんとか思ってました。

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その人とお酒を飲んでいるときに無理やり仮想通貨のウォレットをスマートフォンに入れられて、飲み代をBitcoinで支払われることになりました。ウォレットを見ると残高に0.2BTCと書いてあったんですけど、これが嬉しいことなのかどうかもわからなくて。今考えたら全然嬉しいですよね笑(※インタビューを行なった2018年5月末時点では1BTC=800,000円前後)

当時はブロックチェーンに対して深い理解をしようとはしていなくて、とりあえず教えてもらった取引所で仮想通貨を買ってみたりする程度の関わりでした。なので関心としてはちょっと面白そうだな、儲かるといいなくらいの感覚です。

その後2016年にEthereumを知りました。ブロックチェーンでアプリケーションを作ったり動かしたりできるチェーンがあることを知ったので、それからブロックチェーン関連のニュースを読んだりして情報だけは手に取るようにしていました。

2017年に入ってリコメンドエンジンのチームのもう1人にブロックチェーンの話をするうちに意気投合して、一緒に勉強をしていこうとなりました。そこからブロックチェーンのことをしっかり学ぶようになりましたね。

DMMではBitcoin決済も導入していましたし、社内でブロックチェーン関連の勉強会も開催されていました。それに加えて関連する書籍を片っ端から読み漁りました。ブロックチェーンへの興味関心に火がついたのはHotaruの篠原ヒロさんとお会いしたときです。彼とラムしゃぶを食べながらブロックチェーンの話をしていて、とても面白かったんですね。彼が登壇するイベントに参加したりする中で知人も増えていき、ブロックチェーンに関連する情報が集まるようになってきました。

牧野:ではブロックチェーンを本格的に学び始めてからまだ1年くらいなんですね。

篠原:そうなんです。

牧野:あれ、「ブロックチェーンアプリケーション開発の教科書」を出版されたのって今年の2月ですよね?

篠原:ですね。ブロックチェーンを学ぶ中でいろんな本を読んだんですけど、どれもちょっとだけ間違っている部分があるんですね。最初から最後まで全て正しい、っていう本がなかった。「マスタリングビットコイン」くらいですかね、全部正しいと感じたのは。

だったら自分たちで本を書こうよって話になって、台割りを始めたのが10月末で1月頭には書き終わりました。仮想通貨が盛り上がっている時期でもあったので出版社としても早く出したいという狙いもありました。土日とかお正月もずっと書いてましたね。

ブロックチェーンが無くなっても爪痕は深く残る

牧野:書籍を書かれたりブロックチェーン関連のイベントの登壇も多いですが、なぜブロックチェーンの世界に身を置いているのですか?

篠原:単純に楽しいからですね。ブロックチェーンって既存の技術の組み合わせだと思うんですよ。Peer to Peer(P2P)もProof of Work(PoW)も昔から概念としては存在していました。

既存の技術が絶妙なバランスをとっていて、世の中のいろんな問題を解決しようとしているのが、とても面白く感じます。ナカモトサトシのBitcoinのデザインペーパーはとても簡潔に見えるのですが、設計がとても素晴らしい。Ethereumのイエローペーパーも超スマートです。一人の技術者として素直に感動したことを覚えています。

一つの技術で世界が大々的に変化することってあまりないと思うんですけど、ブロックチェーンはその可能性があるかもしれません。でも反対に言えば、今ブロックチェーンの技術がポシャっちゃってもいいと思うんです。すでにブロックチェーンは世界に爪痕を残していますから。

牧野:爪痕というと?

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篠原:これは個人的な考えなんですけど。分散型、非中央集権の考え方っていうのは中央管理者のいない社会主義とか共産主義とかに似ているなと思ってまして。アントニオ・ネグリのEmpireという本があるのですが、アメリカのような国ではなく、民衆により新しい形の帝国が生まれてくるということを言っているんです。これってDAO(Decentralized Autonomous Organization、自立分散型組織)とも似ています。中央となる管理者が存在しないため、どこか一つのノードを破壊したとしても組織は生き続けます。

今我々はBitcoinとかEthereumに代表されるブロックチェーンのプロダクトを使って、これまでになかったような社会の仕組み、組織の構造を変える社会実験を行っている感覚です。

実験を重ねる上で非中央集権のシステムが導入できる部分、できない部分が分かれてくると思います。だからもし今ブロックチェーンがなくなっても、考え方はなくならないと思います。

牧野:大きい社会実験ですね。

篠原:ですね。だってBitcoinってデジタルのデータなのになんでそれに価値がつくんだろうとか。そもそも労働の対価がなぜお金なのかとか、貨幣ってなんだっけとか、そもそも価値ってなんだろうとか。いろんな問いがあるわけで、それを瞬間的に答えを出すことは難しいので実験という感覚になります。

牧野:経済学とかも学ぶ必要がありますね。

篠原:経済学も社会学も政治も学ばなきゃいけないですね。この前Consensus2018に参加するためにアメリカのJFK空港に行ったんですが、ユダヤの方がお祈りしているのを見たんですね。そういえばと思ってユダヤ教について調べて見たんですが、彼らは土地や住むところを奪われていて、「私達の資産は”知識”」と言っているんです。そしてその資産を奪われないための所有の仕方が「お金」なんです。

彼らは世界中に分散して生活をしていますが、タルムードという教えを守っています。これはパブリックチェーンとかオープンソースの考え方にも近いかなって思いました。

ブロックチェーンの世界に必要な「課題意識を持つ人材とは」

牧野:篠原さんはブロックチェーンに携わるエンジニアの教育や啓蒙活動を行っていますが、ブロックチェーン領域のエンジニアに必要な素養は何だとお考えですか?

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篠原:何かしら解決したい課題を持っている人が向いていると思います。その課題の解決方法って色々あるとは思うんですけど、ブロックチェーンで動くプログラムを書こうと思えばEthereumであればSolidityを使えば書けます。NEMであればAPIを叩けばサービスが作れます。ブロックチェーンに関わるための技術的な敷居は下がっていく傾向にはあると思うんですね。

でもそのプロダクトやサービスが本当に価値を持つものになるかどうかって、その人が解決したい課題に対する思いと直結すると思うんです。ブロックチェーンでサービスを作りたいとなったらコードが書けるだけでなく、経済合理性の設計もできなくちゃいけません。ユーザーにどんなインセンティブを持たせるかを考える必要があります。

そうなると学ぶべきことが多すぎるのですが、課題意識を持っている人であればその課題解決のための方法は学び続けると思います。実際僕自身もブロックチェーンを本格的に学び始めてからまだ1年ですし。課題意識を持って、とにかく手を動かしたり、人と会話しながら、ブロックチェーンの特性を活用してどんなことができるかを考え続けられる人には向いていると思います。

牧野:DMMでのインタビュー記事でブロックチェーンのプロダクトに対する独自の評価基準を拝見しました。これはどのように活用されていますか?

篠原:10個は多いかなって思っていますけど、全部を満たす必要はないです。この中でいくつか満たしておいたほうがいいよね、という指針的な捉え方をしています。

個人的には改ざん耐性だったり、スマートコントラクト開発部なので自動化だったりは注力したいと思っていますけど。最終的には自動化が大事になると思っていて、特にIoT領域では必要になります。

さらにはそのために満たす必要のある基準が多くて、価値移転も大事だし、トラストレスな設計も大事です。これらは段階を踏んで徐々に基準を満たすようなプロダクトが生まれてくればいいなと思っています。

牧野:最後にブロックチェーンに興味のあるエンジニアにメッセージをお願いします。

篠原:ブロックチェーンって敷居が高いって思われているので、その敷居を下げるような活動をしたいですね。あとは技術力についてです。Webサービスやアプリの開発については日本のエンジニアのレベルは海外に比べて低くないと思っています。

ただブロックチェーンのコアレイヤーやプロダクトに関する海外のエンジニアはレベルがとても高いです。これにはP2Pや暗号学の知見が日本国内だと学ぶ機会も使う機会も少なかったことが原因です。

ブロックチェーンは国境は関係ありません。インターネットはどこでも繋がっているので、どんどん外に出て欲しいし、議論に参加して欲しいです。国境は取っ払って、ブロックチェーンを志すならDecentralizedな生き方をして欲しいと思っています。僕もそうなりたいと思っています。

牧野拓也
人事部所属、GameWith Magazine編集長。1989年生まれ、愛知県出身。2018年3月より現職。
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